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 先週の土曜(13日)の夜10時からは、テレビ東京の「美の巨人たち」を観た。取り上げていたのは、米国人にはとても人気があるというエドワード・ホッパー(Edward Hopper)である。
 ホッパーは以前にも、「ナイト・ホークス」が取り上げられていたのだが、今回は「ふたりのコメディアン」という作品である。

 エドワード・ホッパーは1882年ニューヨーク州に生まれた。若いころに印象派の絵画に憧れフランスに渡ったということだが、作品が評価されることはなかった。その後帰国したもののパリのカフェを描いた「青い宵」が酷評を受けるなどして、一時油絵を描くのを止め、生活のために広告のイラストレーターをしていたという。
 米国は1920年代の黄金の時代を迎えていたが、ホッパーは広告の仕事の傍ら、静かにニューヨークという大都会の裏に潜む孤独や哀愁を見つめていたようである。

 彼の描く風景には、誰にも見向きもされない、活気も喧騒も華やかさもないような場所が多い。「日曜日の早朝」という代表作の一つには、理容店などの小さな商店が描かれているが、人の影はなく恐ろしいほどの静けさを感じる。
 人間を描いても、人形のように表情がなく、横を向いていたりうつむいていたり、画面からこちらを見ている人はいない。観る者に、見てはいけないものを見てしまったような気分にさせるものもある。
 革新的な一枚と言われている「ナイトホークス」では、深夜のコーヒーショップのお客と店員を描いている。ナイトホーク(nighthawk)とは「夜更かしをする人」という意味だが、一人の客とアベックの客、そして一人の店員が、都市に住む人々の孤独、虚無、哀愁とともに、物語をも感じさせる。だた、店内の人工的な光の明るさと、外の暗さのコントラストが美しい。大都会が生み出す風景画である。

 ホッパーはジョセフィンという女性と結婚する。彼にとってはかけがえのない伴侶だったようである。ケープコッドに家を持ち、ニューヨークのアトリエとの間を車で通いながら、絵を描いていったということである。
 この番組で取り上げた「ふたりのコメディアン」は、そんな彼の作品の中では異色である。仕事を終えた男女ふたりの道化師が、舞台の上から挨拶をしている。最後の舞台なのかもしれない。二人は、彼の他の作品に描かれた人たちとは違い、こちらに顔を向け口元には笑みさえ浮かべている。
 男の右手は微笑む女性の左手に添えられ、女性を一歩前へと誘っているようである。まるで「わがパートナーにも、今一度拍手を」と呼びかけているかのように。描かれている二人は、ホッパー自身と妻ジョセフィンになぞらえたといわれている。

 この絵を最後に、ホッパーは絵筆を擱(お)いた。彼がこの世を去る1967年の2年前、82歳の時の作品である。
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